« 富山県のJSさんへ | メイン | お正月さん »

歌の合戦 (フィンランド=沖縄)

フィンランドは例年にない暖冬という。
ヘルシンキ近郊(フィンランド南部)では、雪のないクリスマス、
「ブラック・クリスマス」だった。
フィンランド北部では、11月に振った雪が
わずかだけ残っている。


地球の環境が大きな声を上げながら
変動していることを実感する。


今年一年間、
フィンランドと中国・雲南省の2ヶ所で、
人と自然とのかかわりと四季を追って見つめる撮影を続けてきた。
2007年8月放送予定のNHKスペシャル
『世界里山紀行・フィンランド・森とともに生きる』と
『世界里山紀行・中国雲南・竹とともに生きる』
の制作のためだ。
NHKのプロデューサーと5年間にわたって暖めてきた企画が
ようやく実現したのだった。


雲南では、「竹林」をテーマにしている。
内容もさることながら、この作品では、
アジアと日本との共同制作の新たな局面を築こうと試みている。
若い中国人ディレクター・カメラマンのチームに、
NHKの名作「大黄河」を撮った日本人名カメラマンが撮影顧問として参加。
意見をぶつけ合いながら、とても良いチームワークが発揮できている。


フィンランドは、友人から「なんで柴田がフィンランドなの?」とよく聞かれる。
柴田=アジアというイメージが定着しているからだ。
フィンランドは、「フン族の国」。アジアの西端なのだ。
ヨーロッパとしてのフィンランドではなく、
アジアとしてのフィンランドを撮っている。
キリスト教が伝わる前の、古い精神文化。
アイヌのイヨマンテに通じる「熊」への信仰。
「森の王」と人間との共生。


フィンランドの古い詩『カレワラ』はとても面白い。
そこでは、「戦争」のとき、武器を持って戦わない。
歌で戦う。
英雄と英雄どうしが、歌を歌いあう。
どちらが知恵に富んでいるかで勝敗が決まる。
沖縄の古い詩『おもろ』の世界に通じるものがある。


  ついでに言うと、フィンランドと沖縄の共通点がある。
   「変人」=「規格外の人間」がとても尊敬されること。
   これって、のびのびとした社会の実現には
   不可欠だと思う。


妬み、そねみ、過剰な自意識・・・、
人間社会から争いがなくなることはありえない。
生物進化の路程にある動物である以上、
人間の遺伝子には暴力性が組み込まれている。
それを抑制するのが、智慧だ。


フィンランドや沖縄の古い文化に
戦争を回避する、
いや、争いを別の次元へと持っていく人類の智慧が
つまっているように思う。


年末になって塩野七生の『ローマ人の物語』最終巻を読んだ。
ローマ帝国末期に、支配者たちのエゴが生んだ戦争が
いかに土地に生きる住民たちを苦しめたかが印象的だ。
また、カエサル以後に「城壁を取り払う」ことで生まれた平和な時代が、
「城壁を作る時代」に逆戻りすることであっけなく滅んだこと。
平和をもたらす最大の方法は、
武装や防御ではなく、
積極的に人々の心と心を結ぶことだということ。


でも、この本、安倍さんたちが読むと
「やっぱり武装は必要だ」という方向で読むのだろうなぁ。


今、フィンランドのスタッフたちから
北部から南部へ向けて出発したという連絡があった。
新年の儀礼――それは日本の新年の神事のような――の撮影のためだ。
今年よかったことの一つは、
若いスタッフや仲間たちに撮影を任せられるようになったことだ。
これまでは僕が全ての現場を仕切らないとならなかったけど、
いまこうして任せられる人たちが生まれてきて、
ほんとうに嬉しい。
自分自身がもっと楽に羽ばたける。
凍った道路を600キロ、無事に走り抜けて欲しい。


About

2006年12月31日 19:06に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「富山県のJSさんへ」です。

次の投稿は「お正月さん」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。