作家、小田実さんが亡くなった。
その著書、「何でもみてやろう」は学生時代に読み、
夢をふくらませたものだった。
つい一ヶ月ほど前、小田さんのインタビューが新聞に出ていて
とても共感したものだった。
突然の訃報に接し驚くとともに、
偉大な先達を失ったという残念な思いでいっぱいだ。
ご冥福を祈りながら、そのインタビュー記事を紹介したい。
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人生の贈りもの 作家 小田実(75)
――(聞き手)憲法が改正されても、今の日本が軍事大国になるとは考えにくい。
(小田) 戦争を知らない人は、戦争に向かっていくときは街に軍歌が鳴り響き、みんなが日本の勝利をひたすら祈っているような異常な状況になると思っているらしい。でも私の経験では、ありふれた日常の中で進行し、戦争へと突入していった。
ヒトラーだって、議会制民主主義のルールの中で平和的に政権交代したんですよ。私が今一番憂えているのはね、民主主義の理想を説いたワイマール憲法をつぶしてナチ独裁政権ができたときと同じことが、日本でも起きるんじゃないかということです。ヒトラーは憲法改正すらしなかった。ただ「国民と国家の困窮を救う」ために憲法を一時的に「棚上げ」すると議会で決め、再軍備に乗り出した。攻撃用の兵器をつくる意図はない、もっぱら防衛用の兵器に限定し、平和の維持に資するつもりだと言ってね。反ナチの人まで「立派だ」と褒めたんだよ。でも事態はどう変わったか。
安倍さんは「美しい国」づくりのために改憲が必要だというが、なぜ必要かはきちんと説明しない。彼はなかなかの雄弁家だよ。小泉さんみたいにハッキリ言わないから、みんな、なんとなくそうかなと聞いている。どうなるかわかんないよ。
――(聞き手)憲法9条の平和主義は非現実的とまでいう人もいます
(小田) 自衛隊は解消し、世界を非暴力の世界に変える努力をしなければならないと私がいうと、理想論だ、現実的に考えよう、自衛隊は憲法でちゃんと認めて歯止めをかければよい、自衛のためには軍隊がいるという人が増えている。でも、本当にそれが現実的なのか。
戦争でいちばんつらかったのは飢えと空襲だった。食糧切符をもらっても現物がない。あと半年戦争が続いたら栄養失調で死んでたよ。今でも日本の食糧自給率は40%。それから空襲。日本は全然抵抗する力がなかった。石油がないから。飛行機も飛ばんよ。日本は「普通の国」じゃないんだよ。そんな国が自衛のためだろうが何だろうが、戦争なんかできますか。
いまの若い人たちは、この冷厳たる事実を知らんわけや。日本が戦争できるような顔してしゃべってる。理想でもなんでもない、現実でるよ。そこから出発しないと。
(朝日新聞2007年6月28日夕刊より)
下線は柴田