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ガード下の楽園

広島の横川シネマと出会って以来、
映画上映にたいする僕の考え方が、揺り動かされている。


何度か書いているが、横川シネマは
30代の若き支配人、溝口さんが、
切符もぎり、上映技師、入場整理係をすべて一人でこなしながら、
さまざまな個性あふれる作品を興行し、
地元の人たちからも「横シネ」の愛称で親しまれている。


場所は、広島の中心部からは離れ、
JRの鉄道高架橋のすぐ下、
いわば「ガード下」の劇場。
上映していると、JR山陽線や新幹線が通るたびに、
ガタンゴトンと音が響き渡る。
お客さんは最初は何の音なのか、いぶかしがるのが、
やがてその音にも慣れ、
現実と映画の世界との橋渡しをする一種の「効果音」のようになってくる。


さらにすごいことに、「ひめゆり」上映の初日は、
お客さんが多すぎたこともあってか、冷房装置が故障してしまった。
お客さんたちは映画館の中で「暑い暑い」と
チラシで扇ぎながら観ていた。
お客さん全員がウチワのようにパタパタとあおいでいる姿は壮観で、
僕は一生忘れることができないだろう。
でも、横シネという映画館が愛されているだけあって、
誰も文句も言わず
むしろ「寒すぎるより良いよ」と言いながら、
みな満足そうに出て来る。


  ~  ◇  ~  ◇  ~  ◇  ~  ◇  ~  ◇  ~


この横シネの上映に立ち会ったとき、
映画館で上映することの面白さをつくづくと感じたのだった。
映画は小屋に生かされるんだなぁ、
土地に根付いたその場所でやることに意味があるんだなぁと思った。


横川シネマに出会うまでは、
少しでも画質の良いスクリーンの、音質の良い空間で上映したい、
そんことだけを考えていた。
空調がどうなっているか、椅子はどうかも気になっていた。
もちろん、それらが良いことにこしたことはない。
けど、それよりも大切なことがあることに気づいたのだ。


横川シネマでは、最近、
横川の商店街を舞台にしたサスペンス映画が
市民の手で作られて上映されたこともあるという。
手作り映画に多数のお客さんが詰め掛け、
横シネという場を支えてもいる。


ひるがえって考えたとき、
今年3月に、沖縄・桜坂劇場で「ひめゆり」が上映されたとき、
上映ホールの真上で催されたフラメンコ公演の靴音が
ガタガタと鳴り響くことについて
極度にナイーブになって文句を言っていた自分が
恥ずかしくなる。


桜坂劇場という、横シネと同じように土地の人々に支えられる空間があるからこそ
「ひめゆり」も羽ばたいていくことができた。
良くも悪しくも、そういうフラメンコの靴音も含めて
これが劇場なんだなぁと。
いま思えば、あのフラメンコの靴音も最高の効果音だった。

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●横川シネマのロードショー上映は、おかげさまで好評につき、期間が延長された。
  詳しくは、横シネのホームページまで。

    なお、空調については数日前に修理が終わり、「快適に」(?)観られるという。
    「電車」の効果音は、もちろん、今も堪能できる。

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追伸 きのう、きょうと久しぶりにポレポレ東中野に行ってきた。
    短いトークをし、映画を観終わったお客さんたちと話しをした。
    8月15日、16日のCoccoさんたちとの上映会にも参加したという若い人たちが何人かいて、
    「2度観ると、もっと深く感じられる」と言ってくれたのが、
    とてもうれしかった。
   

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2007年9月 9日 16:56に投稿されたエントリーのページです。

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