中国新聞の佐田尾さんが書いた本の書評を書かせていただいた。
すでに中国新聞や熊本日日新聞、京都新聞などの書評欄にも掲載されたものだけど、
皆さんにも紹介します。
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『風の人 宮本常一』
佐田尾信作著、
2008年、神戸・みずのわ出版
2100円(税込)
詳細は→ http://www.mizunowa.com/book/book-shousai/kazenohito.html
書評
この本を携えて、中国山地をはじめとする日本の村々を歩いてみたくなった。開拓で築いた村、中世の面影をそのまま残す村、ダムに沈んだ村。そこには必死に生きる「地の人」たちがいた。「地の人」たちを訪ねて詳細な記録を残して歩いた「風の人」がいた。
その「風の人」が宮本常一。戦時下に師である実業家渋沢敬三から「この戦争は負ける。戦後の日本社会の再建のために、日本全国を歩いて、そこで見聞きしたものを戦後へつなげてほしい」と言われ、全国を旅した。戦後、宮本の教えによって大勢の若者たちが地域に入り込み、調査をしながら、地域づくりに深くかかわった。
本書は宮本が出会った人たちや教え子たちを今の時代に訪ねたものだ。著者は普段は聞くことのないこうした人たちの記憶と思いに迫ることで、知られざる宮本の人物像を浮かび上がらせる。まさに「旅する民俗学者をめぐる人と時代の物語」(帯文)である。 「宮本先生は放火魔です。消防車が来ないだけ」と笑う稲垣尚友は、「職人はいいぞ」と宮本に焚きつけられ今は竹大工を営む。「サラリーマンにはなるな」という宮本の考えのもと、民の姿と自らの接点を模索した人の激しい息づかいに圧倒されそうだった。
宮本の古い弟子の一人に記録映画監督の姫田忠義がいる。僕はその姫田の弟子で、宮本からすると孫弟子と言えるかもしれない。僕は姫田から常々、こう教えられた。「犬も歩けば棒に当たる、当たった出会いを大事にせよ。その時、相手を見下しもせず、へりくだりもせず、同じ目線に立て。そして飯を食う金があったら、フィルムを回せ」。全国公開中の僕の作品「ひめゆり」は、宮本から姫田へと伝わった方法論の延長にあると思っている。
宮本が残した遺産は膨大で、著作集は刊行開始から40年近くたつが、今も完結していないという。宮本の故郷の周防大島にも3年間勤務した著者は、等身大の宮本を探り出そうとする。本書は中国新聞の連載を改題、改稿した。固定観念で語られがちな宮本像を揺るがし、その多様さを印象付ける一冊である。