シネマテーク高崎に駆け込んだ。
高崎映画祭の企画「アレクサンドル・ソクーロフ特集」のうち、
『エルミタージュ幻想』と『ロストロポーヴィッチ 人生の祭典』を観た。
『エルミタージュ幻想』は2時間が1カットで作られた映画として有名で、
以前、NHKスペシャル『新シルクロード』を制作するときに
担当プロデューサーと一緒に、新たな発想を得る参考にと観たことがあった。
きょうは、技術的にどこかにあるはずのカットの繋ぎ目を見極めようと画面を凝視したが、
分からなかった。
(観た目は1カットだが、技術的には無数の断片をつなぎ合わせているはずなのだ。
が、うまく合成されていて分からない・・・)
『ロストロポーヴィッチ 人生の祭典』は、20世紀を代表するチェリスト、
ロストロポーヴィッチをとらえたドキュメンタリー。
最後の10分間で、それまでの1時間半の映像コラージュがすべて繋がる
見事な映画だった。
これ、テレビだったら、おそらく僕は途中でチャンネルを変えていただろう。
映画ならではの、最後の最後で大きな「裏切り」があって、
それまでの映像体験をひっくりかえし、別の次元へと僕らを運んでくれる。
ダイナミックな表現だ。
ソクーロフ監督が、ロストロポーヴィッチの心を開いて撮影させてもらったことも凄いし、
映像構成も強烈だった。
巨匠ソクーロフ監督に即して言うのもおこがましいが、
『ひめゆり』も、最後の10分で、それまでの流れを裏切り、
観る人の心を予想外のところへ運んで行く点は共通している・・・、
と思う。(自己満足?)
テレビのドキュメンタリーと、映画との大きな違いを改めて思った。
夜10時過ぎに映画を観終わってから、
高崎のミニシアター、シネマテーク高崎のスタッフ
(高崎映画祭の中核スタッフでもある)と飲みに行った。
高崎は、キリンビールの工場があるだけに、
新鮮でおいしいビールが安く飲めることにびっくり。
シネマテーク高崎の代表、茂木正男(通称モギマサ)さんは、
去年ガンの手術をして抗がん剤を飲んでいるにもかかわらず、
ビールをがんがん飲む 。
たぶん無理して僕に付き合ってくれているのだろう。そんな心意気の人だ。
茂木さんが言う。
「最初、『ひめゆり』という映画のことを聞いたとき、
“ なんて時代錯誤なんだろう、絶対みたくない ”と思った。
これまで『ひめゆり』という名の映画をいくつも観てきて、辟易していたからだ。
ところが、志尾(シネマテーク高崎、33歳の若き女性支配人)が、
どうしても『ひめゆり』をやりたいという。
それで仕方なく観てみたら、観る前と観終わった後とで、
まったくモノの見え方が違っていた」
去年の11月に高崎映画祭のプレイベントとして『ひめゆり』を上映してくれたのも、
そして今回の映画祭特別賞につながったのも、志尾睦子さんという若者の熱意が発端だったんだ!
嬉しい驚きだった。
茂木さんは、ホップの泡を飛ばしながら、つづける。
「『ひめゆり』は、これまでの戦争をあつかった映画とまったく違う。
品があり、良い意味でイロのついていない、透明感のある映画だ。
女性が過酷な状況に置かれるなかでどういう運命をたどるのか、それを描いた点で
今のイラクやアフガニスタンなどの状況ともつながり、普遍性を獲得している」
高崎の人は、誉めるのがうまい。
だからだろうか、高崎映画祭には、大スターや大監督たちがつぎつぎと足を運ぶ。
あのソクーロフ監督も、茂木さんの熱烈なラブコールによって、
1996年に1週間、高崎を訪れたという。
ビールが進む中、茂木さんが、『ひめゆり』の今後の映画製作についての
斬新なアイディアを出してくれた。(内容はまだ秘密)
できるかどうか、良いかどうか、すぐに答えは出せないが、
真剣に考えてみたい。