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キネマ旬報 渡部実さんによる紹介記事

昨日発売された雑誌、キネマ旬報9月下旬号に
映画評論家、渡部実さんによる
「森聞き」の紹介記事が掲載された。
その最初の一部を紹介したい。


~  ◆  ~  ◇  ~  ◆  ~  ◇  ~  ◆  ~  ◇  ~  ◆  ~  ◇

      映画は冒頭、まず高校生たちの紹介から始まる。
     ここでは東京に住む河合和香さん(18歳)の言葉を
     引用させていただこう。河合さんは言う。
        「何か、今、この世界というか、地球がこう、
        何か変わる時期に来ているような気がします。
        イギリスで産業革命が起きた時も、アフリカで
        人類が誕生した時みたいに、何か大きな
        何かに変わる時期に来ているんじゃないかなぁ
        と思いました」
      ここでの河合さんの言葉のうち、イギリスの産業革命、
     アフリカでの人類の誕生というものは、学んだ知識から
     生まれたものであろう。注目してよいと思うのは、
     それ以外の言葉。「何か=something」という言葉を
     河合さんは4回使っていることである。これは言葉、意見
     としては曖昧である。それではこの河合さんの言葉を
     完全な意味を成していない言葉と捉えるか、それとも、
     漠然としているが、おそらく聖書に登場する預言者の
     言葉のような世界をここに感じとるか、そのどちらかを
     選ぶことでこの映画の見方は変わってくるのではない
     だろうか。河合さんの言葉は言葉が言霊(ことだま)と
     なって彼女の身体に入り込み、その言葉を言わせてい
     るように思われるのだ。
      この映画は漠然とした言葉だからその言葉に社会的
     な意味付けは弱いだろう――とは見ていない。むしろ
     逆に自然発生的に生まれた一言一言に限りない意味が
     あるのではないか? と訴えているようだ。この映画に
     は冒頭から言葉に向ける厳粛さがある。
                              (つづく)
             (キネマ旬報9月下旬号、渡部実「文化映画紹介」より)


~  ◆  ~  ◇  ~  ◆  ~  ◇  ~  ◆  ~  ◇  ~  ◆  ~  ◇


渡部さんは、和香さんの言葉が心に突き刺さり、そこから
映画全体を読み解こうとしている。
記事全体が、「森聞き」の世界を的確に捉えていてくれており、
僕自身はとてもありがたく思っている。


渡部さんの言うとおり、映画「森聞き」は
冒頭に配置した高校生たち4人の言葉を
どのように受け止めるかで、
映画への評価、好き嫌いが変わってくる作品だと思う。


毎度のことだが、映画を編集している途中で
スタッフや友人から色々と意見を言われるのだが、
高校生の言葉への拒否感―――
「なんだ、世間知らずの高校生が訳のわからない
生意気なことを言っている」―――
という受け止め方を、強く示されることもあった。
そういう否定的な意見は、
ひょっとしたら大人たちの一部からは
どうしても拭い去れないだろうと思い至り、
映画の中で、その感情をも取り入れてしまった。
「世間知らずの高校生が 山の老人と出会って
 何が面白いんや?」
という字幕を、映画のかなり冒頭部分で出すことにしたのだ。
その答えを見つけられるか、否か―――
それは映画をご覧いただく人に委ねるしかないし、
僕なりには可能なかぎり丁寧に構成した。


渡部さんは、高校生・河合和香さんの問いかけ、
「何か世界は変わり始めている」という問いかけの答えを、
あっと驚くところに発見された。
それは製作した僕たち自身の思いを越えて、
映画の世界を大きく押し広げてくださったように思った。
「私はこの映画に登場した他の森の名人たちのエピソードも含めて、
世界はどこかでつながっているということを改めて実感した。」

と締めくくっている渡部さんの記事。
「キネマ旬報 2010年9月下旬号」、
ぜひ手にとって、続きを一読してほしい。

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2010年9月 5日 13:17に投稿されたエントリーのページです。

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