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映画「ビューティフル」 (Biutiful)


 「あまりに暗い顔をして黙って出て行くし
  家にも帰って来ないから、 鬱になったのかと少し心配した」
とカミさんから言われた。
いや、心配はないよ!
仕事の大きな山を越したあとに訪れる時間。いつものことじゃないか。
特に、この1年間ずっと張りつめたまま撮影してきた「焼畑」の番組の
編集が終わったところなのだから。
放送日が伸びてしまったので完全に仕上げたわけではないけれど。
いろいろな方の力添えをいただき、おかげさまで、いい番組になると思う。


こんな気分のときは映画を観るか、旅をするに限る。
昨日立て続けに観た映画はハズレだったけど、
今朝観たスペイン・メキシコ合作映画「ビューティフル」(イニャリトゥ監督)は
心底から揺さぶられる作品だった。
舞台はバルセロナの場末。非合法な移民たちも多く暮らす街。
生き延びるためにあらゆる稼業をこなし、時には非合法な仕事もする男ウスバルが、
余命2ヶ月の末期がんを告知される。
妻との生活も破綻している中、愛する幼い子供たちはどうなるのか。


【以下、ネタバレなので要注意】


まったくもってハッピーエンドではない。
子供の未来を託そうとした移民女性は金を盗って逃げてしまう、
妻は躁鬱で施設に入り、たった一人の身内の兄は信用ならない。
だからだろうか、ハリウッド映画と違って、観客は僕を含めて5人しかいなかった。
こんな良い映画なのに・・・。


そもそもウスバルは、父親がスペイン内戦でメキシコに亡命したあと、
バルセロナに残された母親のもとで生まれ、父の顔を見たことがない。
ウスバルは生活環境の負の連鎖から抜け出せず、
暮らしは今もって厳しい。
それは、いまヨーロッパに数多くいる移民たちと同じ厳しさだった。
でも、ウスバルと子供たちとは最後に愛の気持ちを交わせた。
ウスバルは、父親が母親に残したというダイヤの指輪(きっと偽ダイヤ)を
幼い娘に渡してこときれる。
このとき、きっと何か大切なもの、人間の尊厳が祖父、父、娘へと伝わった。
この愛らしい娘は、生活の苦しさやまわりの環境から、
将来ひょっとしたら娼婦になるかもしれない。
裕福どころか、まっとうな生活を送れそうな可能性すら、
ほとんど無さそうな環境に置かれたまま残されてしまう。
が、祖父がフランコ独裁に異を唱えたように、
ウスバルが弱い移民たちの思いをしっかり受け止められる男であったように、
子供たちは何か大事なものを受け継いでいくのだろう。
そう想像することで、この映画はかろうじて救いをくれる。
負の連鎖のなかにある一抹の希望。


このおぞましい負のつらなりは、しかし他人事ではない。
スペインのような陰影をくっきり浮き上がらせる光がないから
見えにくいけれど、
僕たちのまわりにも。

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2011年7月21日 23:54に投稿されたエントリーのページです。

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